FC2ブログ

【満田研究室ブログ】

佛教大学社会学部満田久義研究室通信

マラリア巡礼の旅ー海外研修報告

マラリア巡礼の旅ー海外研修報告ー

昨年度佛教大学学外研修報告の冊子が刊行されたので紹介します。
1マラリア巡礼報告
2マラリア巡礼報告2
3マラリア巡礼報告3
下部の「次のページ」をクリックしてください。


  1. 2010/11/27(土) 13:54:07|
  2. マラリアの社会学(続き)

善意を尽くすこと

" 他人に善意を尽くしても見返りを期待してはいけない。それは、絶望の深淵から這い上ろうとするとき、予期せぬ人から戻ってくる "と私は強く信じる。

私がマラリア社会疫学研究に引きこまれた経緯をお話ししよう。それは全くの偶然、”佛縁”にある。そもそものスタートは、特殊免疫研究所代表の故 中村徹雄先生からロンボク島での肝炎撲滅プロジェクトの話を聞いて感銘を受けた事による。当時、私はヒマラヤ高地の村々に太陽光発電による明かりを灯す「ヒマラヤ・ライト財団」にボランティア参加し、2000Mの村々にシェルパーらと太陽光発電機やその他の機材を運び上げていた。中村先生はそのことを知り、私をロンボク島へ誘い、当時のインドネシア国立マタラム大学ムリヤント学長を紹介された。中村さんは、「満田先生、熱帯途上国の病気は、医者だけでは何ともなりません。栄養状態、衛生環境も最悪。何よりも貧困が諸悪の根源です。だから、人間の貧困を知る社会学者が必要です」と進言された。3人とも同世代、しかも社会正義に強い関心を持っていた。すぐに意気投合した。

ムリヤント先生の学長、医者、そして人間としての生き方には心打たれた。彼は多忙な学長職、押し寄せる患者への治療時間を割いて、私をマラリアが蔓延する村々へと自ら案内した。各地域診療所では若き研修医を励まし、地元住民の声を謙虚に聞き、人望を一心に受けていた。

ある日、マラリアが蔓延するスコトン村の診療所周辺で、早朝に散策していた時の事である。汗だくの母親が赤ちゃんを白衣にくるんで、木陰で診察を待っていた。赤ちゃんの顔を覗き込むと、重篤なのが直ぐにわかった。母親はマラリアに感染した我が子を連れて、山奥の村から徒歩で1時間、そして基幹集落からは馬車で45分ぐらいでやっと診療所に着いたのだろう。診察が始まると、研修医は早速診断した。明らかに顔色が変わり、母親に何か詰問らしき口調で語りかけた。そして驚いたのは、彼は点滴をするでもなく、赤ちゃんをそのまま白衣にくるんで母親に手渡した。廊下から注視していた私には何がなされようとするのかがわからず、ただただ凝視するだけだった。

母親は足早に退出し、村に帰って行った。私は医師に詰め寄った。「金ならある。なんとかあの赤ちゃんの命を」と懇願した。だが、薬もない、医療機器もない、なにもが不足する医療現場では「確実に生き残れる者しか治療されないし、できない」現実がある。

あの母親は、我が子が温かい間に村に辿り着かなければならない。なぜならば、イスラムの彼らは、死者の霊は死処に宿ると信じている。わが家、わが村、そして親兄弟、村人が生活する故郷に早く戻るのだ。家では、親類縁者が集い、白無垢の赤子を中央に皆が最後の祈りをとどける。そして赤子の霊魂は集う人々に永遠に宿ることができるのである。奥地の村では、母親は喪った最愛の子への祈りとして、我が指を切り落とす。その激痛は心の痛みを和らげるとでもいうのか・・・。

*******続く********


2巡回診断を終え語り合うムリヤントと満田2
マラリア社会疫学調査を終え、調査村の外れで昼食を取り、語り合うムリヤント先生と満田。まさに至福の一瞬。

2ムリヤント先生とテレビに
ムリヤント先生が08年度ACHAMADBAKRIE賞を受賞されたとの知らせで、第1チャンネルテレビが西ロンボクの調査地まで追いかけ取材に。

感染症寄生病学会35周年記念シンポ07年8月25-26日シンポ
インドネシア感染症寄生病学会35周年記念シンポ07年8月25-26日シンポ招待講演(バリ島ウダヤナ大学にて)
1記念シンポ感謝の楯同記念シンポの感謝の楯と名札

2Mulyanto Budda
ムリヤント先生から送られた聖なる香りの白檀仏像。我が家の家宝として玄関に鎮座する。

下部の「次のページ」をクリックしてください。
  1. 2010/11/26(金) 00:20:22|
  2. ちょっとブレイク
次のページ

FC2カウンター

プロフィール

佛教大学社会学部満田研究室

Author:佛教大学社会学部満田研究室
【本ブログの休止と新ブログ『マラリア通信(仮称)』のお知らせ】
満田研究室ブログは、2009年満田教授の海外研修の時、満田ゼミ生との情報交流のために開設された海外通信ブログ。インドネシアのマラリア制圧に関する情報からエコツアー、原発、感染症パンデミックなどのホットな話題をブログ形式でお送りしてきました。
満田教授は、2009年4月から半年間のドイツ・オスナブリュック大学日本研究所とイ ンドネシア国立マタラム大学医学部での海外研修から帰国。さらに10月から3月までの京都大学大学院経済学研究科での研究員生活を終え、2010年4月からは佛教大学社会学部公共政策学科教授に復職しました。
2011年からはマラリア制圧のために、セレベス、パプア、アロール島などでマラリア医療支援活動を継続。また、エクアドルのアマゾンジャングルにある世界で最も生物多様性が高いヤスニ国立公園の自然保護活動や、ベトナム政府および国連機関とのベトナム農村での持続可能な観光に関する共同研究も実施しました。
2013年12月からセレベス島北端のバンカ島で中国企業による鉄鉱石開発からジュゴンを守る国際NPO[ジュゴン環太平洋ネットワーク]の創設準備。沖縄辺野古沖のジュゴンに関する基本情報を収集し、ジュゴン保護に関する研究を実施しました。
2019年3月、佛教大学社会学部を定年退職(同大学名誉教授)。 9月からインドネシア国立マタラム大学医学部客員教授として、ロンボク島でのマラリア撲滅のための社会貢献活動に尽力する予定です。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

妊婦さんにミルクを❗️プロジェクト (7)
平成が終わり、昭和が去る。そして、令和を拓く! (14)
佛教大学最終講義190118 (10)
素晴らしいお知らせ (201)
アチェの慟哭と哀惜、あれから10年 (1)
マラリア戦争の深部 (25)
マラリアの社会学(続き) (7)
NO MORE TUNAMI、アチェ、そして東日本 (37)
18ロンボク震災報告 (2)
海洋哺乳類との共生への道 (40)
ザトウクジラとの遭遇、ドミニカ大西洋洋上300km (5)
サンイグナシオ・ラグーンとコククジラ、メキシコ (2)
ジュゴンを救う!活動、セレベスから沖縄 (35)
世界海中遺産の旅 (7)
バヌアツ物語 (4)
PNG巡礼の旅 (5)
極楽鳥の舞う島の子供たち (1)
ラジャ・アンパト:極楽鳥の舞う島の子供たち (6)
卒業生通信 (15)
エコツーリズムへの招待 (11)
ちょっとブレイク (52)
環境社会学への誘い (15)
環境と地域 (11)
ふるさと納税 (2)
環境と地域+エコロジー (3)
環境と開発 (7)
原発の話 (27)
ヤスニ提案を読み解く (10)
アマゾンジャングルからの報告 (4)
ダーウィン巡礼の旅 (13)
緊急アピール (25)
新型インフルエンザとパンデミックの旅 (9)
環境と開発エコロジー (2)
ブータンからの便り (12)
赤道の国 (2)
ベトナム新農業・農村開発10か年計画 (2)
ドイツ生活 (1)
インドネシア生活 (1)
未分類 (13)
訃報 (6)
管理人 (1)
知床秘話 (4)
仁淀川からの風 (1)
社会的起業の提案 (1)
エボラ出血熱 (4)
沖縄・石垣からの風 (3)
知床世界遺産 (1)
京のおもてなし文化の旅 (9)
平成28年熊本地震 (3)
命 ファースト! (1)

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する