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【満田研究室ブログ】

佛教大学社会学部満田久義研究室通信

【卒業生リレー通信】 ⑮ 【全学総代が送る教師を目指す諸君へのエール】 

【卒業生リレー通信】⑮
【全学総代が送る教師を目指す諸君へのエール】

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平井(旧姓片山)佑子君(平成2年度卒業)は、「全学総代」(全学部卒業生で成績一番)の優等生だった。彼女の成績は、150単位以上の平均得点が95点弱。とんでもない白眉だった。2回生時、彼女のリポートを読んで、感嘆絶句したのを覚えている。私の講義は常に準備などしたことがない(なかった)。だから、話は飛び飛びで、支離滅裂?ところが彼女のノートを見ると、ものの見事に論理再構成がなされ、私が伝えたかったことが一目瞭然。教職を目指す諸君、総代のエールを確と聞き入れるとよい。必読!

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平成2年卒業の平井(旧姓片山)祐子と申します。現在京都府内の中学校で社会科教諭として勤務しています。以前、このリレー通信に掲載された小林君とは同期です。彼からのバトンを引き継ぐよう、満田先生から言っていただきました。これまでの数々の通信を読ませていただき、私が学生のみなさんにどのようなことをお伝えできるのか、と少々不安な部分もありますが、一社会人として日頃思っていることを書きたいと思います。
 
 さて、まず満田先生との出会いですが、その講義を受けたとき「何か違うぞ。この先生は・・」と思ったこと覚えています。今から思えば、私が現在就いている教師という仕事の在り方に大きな影響を与えていただいた出会いでした。では、どのようなことに影響を受けたのかですが、やはり最大のポイントは「伝えたいことが、明白である」ということです。先生のお話は、言いたいことが学生にスムーズに伝わるように、ずいぶん工夫されていたように思います。講義によっては最初に結論がどん!と出された展開もありました。また、視覚に訴える教材を準備されたり、自分自身の体験談をふんだんにもりこまれたり・・・。とにかく受講する学生の集中を高める工夫が随所にありました。

 私自身、毎日生徒と接しながら、「伝えること」の難しさを身にしみて感じています。自分が分かっていても、それを人に分かってもらうのは、本当に難しいことです。 例えて言うなら、自分はテニスのボールをうまく打てる。でもその打ち方を初心者に伝え、うまく打ってもらうのは難しいですよね。それを何とかして打ってもらうようにすること。それが教師の仕事です。途中でやる気がなくなって、ふてくされることもあります。生徒によってできる速度には違いがあります。また、一生懸命やる生徒もいれば、ちょっと気が抜ける生徒もいます。練習中に仲間とトラブルになる生徒だっているかもしれません。100人生徒がいたら、100通りの習得方法があるのです。それに粘り強くつきあっていくのが教師です。
 
 私がいた頃の満田先生のゼミには、強烈な個性を持った学生がたくさん集まっていました。だから、先生はさぞかし大変だったと思いますが、私たちがするどんな質問にも、まっすぐに答えていただきました。「この先生は本気や」だから、あの個性派集団がまとまったのだと思います。当時のことをも踏まえて、私が教師として、大切にしていることを、書き出してみたいと思います。

①本気でやる。
②粘り強くやる。
③思いやりを持つ。
④背景を知る。
⑤自分のチャンネルを増やす。
⑥昨日より、少し前進する。

 ①・②は満田先生から学んだことです。中途半端な気持ちでは、人に何かを伝え、また成長させることなんてできないと思っています。生徒の人生のたった数年ですが、成長期の彼らと接する責任を、日々感じています。

 ③は、いろんな意味がありますが、その中の一つは「難しいことを難しく教えるのは誰でもできる。難しいことを易しく教えてこそ、生徒への思いやり(優しさ)」という教えです。そこには、教育的工夫が必要です。その工夫は簡単ではありません。しかし、それを怠たることはできないのです。

 ④については、先ほど、100人の生徒がいれば100の習得方法があると述べましたが、同じように100人の生徒がいれば、100のご家族が、100もの願いがあります。生徒は学校でいろんな顔を見せますが、その顔は生徒の生活のほんの一部です。昼食の時間。みんな何事もなく普段通りにお弁当を食べていました。私が担任していたある男子生徒も、いつものようにお弁当を友達と食べていました。その日の夕方に、男子生徒の母親から電話が入りました。「先生、お陰様で退院しました」と。何のことかと思いました。実はそのお母さんは事故で入院されていて、その間の食事はほとんどその男子生徒が作っていたのです。しかもその事実を学校の誰にも告げず、家では家事のほとんどをこなしながら、普段通りに学校に来て、普段通りに部活をしていたのです。でも、時々珍しく授業中に眠そうにしていることもありました。事情を知らない私は、またゲームでもして寝不足なんだろうと、高をくくっていたのです。本当にどきっとしました。その時「あんた、またゲームやろ?」なんて声をかけていたら、どんなにその生徒の心を傷つけていただろう、と思うと冷や汗をかきました。生徒は、学校に来るまでに、私たちの知らない多くの時間を過ごして、いろんな背景を背負って登校します。それをできるだけ知ろうとすること。これは教師には不可欠な要素です。

 ⑤は、④と重なることかもしれません。100人の生徒がいれば100の個性があります。その中の何人かは、私とほぼ似たような価値観を持っているとします。好みや考え方が似通っているもの同士なら、うまくいきます。でも肝心なのは、似たもの同士でない(異なる個性を持った)生徒とも必ずやっていかなければならないということです。だから、自分の趣味でない本でも、テレビでも、何でも生徒が興味を持っているものは知っておきたいと思っています。そして、そんなことをしながら、それぞれの生徒が発している電波にチューナーを合わせながら接することができる教師になりたいと常に意識しています。

 ⑥は、どんな仕事にもいえることだと思います。生徒は毎年変わります。同じ教材であったとしても、同じ教え方でうまくいくとは限りません。年齢を重ねても新しいことを吸収する姿勢を持ち続けないといけない。

 次に、これから社会人として(教師を目指している方なら教師をめざしている者として)羽ばたいていかれる学生の皆さんに、僭越ながらアドバイスをするならば・・ということで何点か書かせていただきます。
  
①自分自身をよく見ること
 自分自身が今までつきあってきた人たちの、その層を思い出してください。どんなことに関心を持ち、どんなことを楽しみ、どんなことに憤ってきたのか、等です。そうすると、自分自身の価値観がよくわかるかもしれません。

②今までつきあったことのない人と関わってみること
 おそらく今までつきあってきた人と同じような価値観を持った人とはうまくやっていけるでしょう。でも、そうではない人の方が、きっと世の中にはたくさんいるのです。そういう人と、学生時代はあまり接点を持つことがなかったかもしれません。でも社会にでると、そういうわけにはいきません。苦手なタイプの人や、自分と全く異なる考え方をする人ともうまくやっていかなければならないのです。だから、自分とは違う人とこそ、積極的に関わるべきだと思います。

③一言の付け加えができること
 具体的にいうと、「おはようございます」のあとに何が言えるかです。「おはようございます。昨日はしんどそうだったけど、今日はどうですか?」「おはようございます。先日は大変良いお話を聞かせていただきありがとうございます」など、何か付け加えることで、相手との関係がよくなります。自分のことをこれだけ分かってくれている、心配してくれていると思うと、嬉しくなりすよね。

④アンテナを高くはること
 人は、いつも同じ状態とは限りません。その人のその時の雰囲気、態度、言葉遣いからどれだけその人の状態を読み取れるのか、読み取ろうと努力するのかということです。
         
 上の①~④のことを一言で言うなら「コミュニケーション能力」です。いろんな人とつきあい、今まで話さなかった人と話せる力を身につけてほしいのです。今の学生は・・などいうつもりは何もありません。ただ、若く心も柔軟なときこそ、この力を身につける絶好の時ではないかと思います。そして、その力が身についていれば、どのような環境に自分がおかれても、しなやかに強くやっていける。

 私たちの時代とは違い、就職もかなり厳しい状況ですね。でも、自分を磨き、頑張っていただきたいと衷心より祈ります。つたない文章ですが、教職を目指す皆さんへの思いやりのメッセージと受け止めてください。ありがとうございました。

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  1. 2012/07/22(日) 21:53:22|
  2. 卒業生通信

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プロフィール

佛教大学社会学部満田研究室

Author:佛教大学社会学部満田研究室
【本ブログの休止と新ブログ『マラリア通信(仮称)』のお知らせ】
満田研究室ブログは、2009年満田教授の海外研修の時、満田ゼミ生との情報交流のために開設された海外通信ブログ。インドネシアのマラリア制圧に関する情報からエコツアー、原発、感染症パンデミックなどのホットな話題をブログ形式でお送りしてきました。
満田教授は、2009年4月から半年間のドイツ・オスナブリュック大学日本研究所とイ ンドネシア国立マタラム大学医学部での海外研修から帰国。さらに10月から3月までの京都大学大学院経済学研究科での研究員生活を終え、2010年4月からは佛教大学社会学部公共政策学科教授に復職しました。
2011年からはマラリア制圧のために、セレベス、パプア、アロール島などでマラリア医療支援活動を継続。また、エクアドルのアマゾンジャングルにある世界で最も生物多様性が高いヤスニ国立公園の自然保護活動や、ベトナム政府および国連機関とのベトナム農村での持続可能な観光に関する共同研究も実施しました。
2013年12月からセレベス島北端のバンカ島で中国企業による鉄鉱石開発からジュゴンを守る国際NPO[ジュゴン環太平洋ネットワーク]の創設準備。沖縄辺野古沖のジュゴンに関する基本情報を収集し、ジュゴン保護に関する研究を実施しました。
2019年3月、佛教大学社会学部を定年退職(同大学名誉教授)。 9月からインドネシア国立マタラム大学医学部客員教授として、ロンボク島でのマラリア撲滅のための社会貢献活動に尽力する予定です。

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