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【満田研究室ブログ】

佛教大学社会学部満田久義研究室通信

【ジュゴンの食み跡調査】

【ジュゴンの食み跡調査】

ジュゴンは、前脚を海底につけて、海草を地下茎ごとブルトーザーのごとく掘り起こして食べるので、その食み跡には数センチ程度の深さの溝が掘れる。これを「ジュゴントレンチ(溝)」と呼びます。この「食み跡=ジュゴントレンチ」を調査し記録することで、ジュゴンの生態調査が可能となります。研修を受ければ、一般市民も参加可能です。

名護市東海岸のジュゴン食み跡
「ジュゴンの食み跡調査」の方法として、① 船の左右に調査員がぶら下がり、曳航されながら、決まった間隔で曳航されながら、目視する「マンタ法」があります。左右等間隔に曳航される様がマンタに似ているから名づけられた。 ②海中実査では、調査海域を碁盤の目のように曳航し、ジュゴントレンチを発見したら、マーカーを投下します。③食み跡の計測は、メジャーで幅と深さを実測します。④ 50㎝平方の枠を設置し、写真を海中撮影します。 ④パソコンで 海草が被われている面積(被度)を%で計測します。さらに、海草の種類とその被度も計測します。⑤マーカーのGPS位置情報、水深、海底の底質(例えば、砂地)を記録します。
【ジュゴン食み跡(トレンチ)調査】によって、どのような種類の海草を、どのぐらいの量を、どの場所で食べているのかが解明できます。すなわち、ジュゴンの食を通した生態調査です。

大浦湾の食後
ジュゴンの科学的な食み跡調査から言えることがあります。①「嘉陽海岸の海草藻場は、西側が東側より被度が高い。」 これは海流の影響と推察される。 ②「海草被度が10%以下の場所で食み跡が多く確認された。」これは、地下茎を掘り起こしやすい被度の低い餌場を好むため。 ③同様に「海底の底質は砂地を好む。」これは、ブルトーザーように地下茎を掘り進みやすいから。また、ジュゴンが好む海草が、砂地に繁殖する傾向があることも影響している?

ジュゴンの生態調査は生態学的にも環境保護の観点からも重要です。そして、潤沢な人的・経済的資源が、さらに専門家による協力支援も不可欠です。このような科学的調査を民間の市民組織(ジュゴンネットワーク沖縄や北限のジュゴンを守る会等)が、限られた予算と人的資源しかもたないで継続して実施されたことに敬意を払うとともに、国(環境省)や地方公共団体、大学などが、ジュゴンの危機にもっともっと積極的に関わってこなかったことを奇異に感じます。

ジュゴンはワシントン条約で保護されている未来世代への貴重な財産です。

辺野古基地移転とジュゴン危機
米軍基地の移設予定地の辺野古崎沖には、ジュゴンの餌場があると考えられます。少なくとも周辺海域には、ジュゴンの最後の生息環境が残されています。ジュゴンは開発に非常に敏感です。基地のような巨大な構造物ができ、船舶が頻繁に往来し、航空機等の騒音が重なれば、絶滅する可能性は高いといえます。地球上のジュゴンの北限にわずかに残る最後のジュゴンを絶滅に追いやることには、慎重であるべきだと、私は考えます。
じゅごんの死亡例米国
ジュゴンは、我が国の法律によって保護すべき対象となっています。文化財保護法(天然記念物指定)や鳥類保護法では、ジュゴンの保存に影響のある行為は禁止されています。さらに、ジュゴン保護にとって最も有効な法律があります。

『種の保存法』(絶滅の恐れのある野生生物の保存に関する法律。米国絶滅危惧種保護法:The Endangered Species Act of 1973、ESAを参照)です!  しかし環境省は、”ジュゴンが国内希少野生動植物種に該当することを認めていながら”、ジュゴンを同法での絶滅危惧種に指定していません。

今、未来の子どもたちにジュゴンの危機を伝えるべきです。
古宇利島の自然

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  1. 2015/03/11(水) 07:33:05|
  2. ジュゴンを救う!活動、セレベスから沖縄

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プロフィール

佛教大学社会学部満田研究室

Author:佛教大学社会学部満田研究室
【本ブログの休止と新ブログ『マラリア通信(仮称)』のお知らせ】
満田研究室ブログは、2009年満田教授の海外研修の時、満田ゼミ生との情報交流のために開設された海外通信ブログ。インドネシアのマラリア制圧に関する情報からエコツアー、原発、感染症パンデミックなどのホットな話題をブログ形式でお送りしてきました。
満田教授は、2009年4月から半年間のドイツ・オスナブリュック大学日本研究所とイ ンドネシア国立マタラム大学医学部での海外研修から帰国。さらに10月から3月までの京都大学大学院経済学研究科での研究員生活を終え、2010年4月からは佛教大学社会学部公共政策学科教授に復職しました。
2011年からはマラリア制圧のために、セレベス、パプア、アロール島などでマラリア医療支援活動を継続。また、エクアドルのアマゾンジャングルにある世界で最も生物多様性が高いヤスニ国立公園の自然保護活動や、ベトナム政府および国連機関とのベトナム農村での持続可能な観光に関する共同研究も実施しました。
2013年12月からセレベス島北端のバンカ島で中国企業による鉄鉱石開発からジュゴンを守る国際NPO[ジュゴン環太平洋ネットワーク]の創設準備。沖縄辺野古沖のジュゴンに関する基本情報を収集し、ジュゴン保護に関する研究を実施しました。
2019年3月、佛教大学社会学部を定年退職(同大学名誉教授)。 9月からインドネシア国立マタラム大学医学部客員教授として、ロンボク島でのマラリア撲滅のための社会貢献活動に尽力する予定です。

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